第二次世界大戦後、米国が中華民国に共産勢力を政権に入れるよう強要していた証拠

「第二次世界大戦後に中華民国・蒋介石が米国に支援を切られた理由が分からない。教えて」という内容のツイートがバズり、リプライ欄で「蒋介石は共産勢力を政権に入れようとしていたから見限られた」といった内容が並び、投稿主もへー勉強になりますー等と返していて、凄まじい歴史の歪曲に驚いたので、裏切られた自由から米国は中華民国に共産勢力を政権に入れるよう強要していた証拠を引用します。

裏切られた自由 下巻 第三部 ケーススタディ

第2編 中国の衰亡

スティルウェルによる連合国構想の再びの要請

一九四五年十一月二十六日、ハーレー駐中国大使が辞任した。電報で伝えられた理由は以下である34

〈(当地の)外交専門家は武装化した中国共産党の側についている。我が国の外交官が、国民党の崩壊を防ごうとする私の努力は我が国の政策ではないと共産党に伝える始末である。彼らは、共産党軍が指導する立場を取るまで、国民党軍と統一すべきではないなどと中国共産党に公然と助言している。〉

わたしはそういったキャリア外交官を職務から外すように要請した。ところが本性に戻ったそういう人間が中国・極東部門を担当し、私の監督官になった。

……国務省内のかなりの勢力が、中国における共産主義(の拡大)を支持していた。

一九四五年十二月九日、バーンズ国務長官は陸軍省に次のような覚書を出している35

〈大統領および国務長官は、平和的民主的方法によって、できるだけ早く(国民党と共産党を)統一させる必要があるとの意見である。

十二月七日の上院外交問題委員会で、国務長官は以下のように証言した。

「戦中の我が国の対中政策は、ばらばらの国内勢力をまとめあげ、共通の敵日本にあたらせることであった。これからの長期的な目標、かつ昔も今も重要な目標は、強力で統一された民主的な中国を作ることにある。

長期目標の実現には、しっかりした中央政府が必要である。もちろん各勢力が真摯な態度で妥協しなくてはならない。我々は、これまでもそう考え、示してきた通り、民主主義の発展のためには蒋介石総統の政府が最も満足のいく基盤となるものと考えている。しかし一方で、幅広い政治勢力を包含した政府にしなくてはならない。そうした勢力はいま、政府内で発言できてはいない。

その限りにおいて我々は影響力を発揮すべきである。国民党政府に対して、いわゆる共産党員をはじめとする勢力と何らかの妥協をするように圧力をかけることがそのためには必要だ」

大統領は、マーシャル将軍に特別代表として中国を訪問するよう要請した。統一のためにアメリカの影響力を発揮するためである。特に、マーシャル将軍には、国民党政府に対して、統一を果たすために主要な政治勢力の代表を収集させ、互いに敵対するのをやめさせることが求められている。〉

十二月十五日、トルーマン大統領は中国政府について最も重要な声明を発表した。この声明は、彼自身の状況認識を基に作成されたとは思えない。この内容を裏で書いた陰謀を企む勢力があることは間違いない。

〈(我が国政府は)国民党政府と中国共産党員との間の敵対関係は解消(させなくてはならないと考える)。〉〔編者注:()内を編者が加筆〕

〈……また、主要な政治勢力の代表による国内会議が開催され、国内の紛争を解消し、中国の統一を達成しなくてはならないと信じる。〉

声明はこの後に差し迫った戦後の再調整に関する様々な合意や活動を引き、こう続ける。

〈……我が国が、中国の国内紛争(の解決)に影響力を発揮するために軍事介入をすることはない。

……これが36、当面の間、中国に我が陸海軍を配置しておく目的である。

我が国は現在の中国政府が一党政権(one-party government)であると認識している。この政府が幅広い政治勢力を代表するものになれば、中国の統一、民主化、そして和平が達成されるものと信じる。したがって、我が国政府は、主要政治勢力の代表を集めた国内会議の招集を強く求めるものである。それによって、そうした政治勢力には中国政府内で公正かつ効力を持つ代表権が与えられる。そのためには、一党による“訓政”(political tutelage)が改められる必要がある。それが国家が民主政体へと昇華する道筋なのである。〉

〈中国共産党のような、政府のコントロールが利かない軍隊が存在し続ければ、中国の統一は不可能である。幅広い政治勢力が代表する政府ができれば、独立の共産党軍は不要になる。すべての軍隊は中国軍として一つになることができる。〉

大統領はこう述べると、この問題は中国自身で解決しなくてはならないとも付言した。その上で、統一政府ができればアメリカは経済援助を惜しまないと述べた37


*原注

34 Patrick J. Hurley, pp. 430-432.

35 China White Paper, pp606-607.〔編者注:フーバーの引用に間違いがあったが修正した〕

36 〔編者注〕この文の前には以下の文章があった(フーバーが省略した部分)。参考のために書き出しておく。

「中国からは日本の影響を完全に排除しなくてはならない。それが中国の和平の維持に不可欠である。同時に、中国は統一された民主主義的な平和を希求する国家にならなくてはならない」

37 China White Paper, pp. 607-609.


ハーバート・フーバー著、渡辺惣樹訳、「裏切られた自由 【下】」、草思社刊、2017年発刊、303〜305、308ページ。

特にいう必要はないかもしれませんが、「毛沢東・共産党は蒋介石・国民党と協調し1つの政府を作る気があったか」が分り易い箇所を引用します。ここ以外でも、頭を下げて協調を願い協議する蒋介石の提案を蹴り、共産党が国民党に無限の譲歩を強請る描写は多数あるのですが、長くなるので省略します。

第4章 一九四九年:自由中国の終焉

一九四九年六月三十日、毛沢東はラジオを使って勝利が確実だと国民に訴え大得意であった2

毛沢東は進歩的な農地改革者だと言って賞賛したり、毛沢東側の代表を政府閣内に入れるべきだと言って蒋介石を急きたてていた一派は、この演説のいくつかのくだりを読むべきだ3

〈国際上、我々は反帝国主義者の側に立ち、ソビエトに指導されている。我々が唯一求め得るのは反帝国主義者側からの真に友好的な支援であり、帝国主義者からのそれではない。

「おまえたちは独裁者だ」。紳士諸君、まさにそのとおりである。我々はこれまでもずっとそうだった。これまでの数十年にわたって積み上げられた経験は、人民による民主的独裁を進めなくてはならないことを教えている。反動的な意見は決して許されない。意見の表明は人民のみに許される。〉

〈民主制なるものは人民の内にあるものであって、彼らにだけ言論の自由、結社の自由が許される。選挙権も同様に、行使できるのは人民だけであって、反動勢力には許されない。つまり、人民にだけ許された民主主義と、反動を抑え込む独裁。これが人民独裁となるのである。〉

〈我々がいまなすべきことは、強力な人民の国家装置の強化である。それは主に人民軍、人民警察、人民裁判所を指し、国家と人民の利益を防衛することにつながる。労働者階級と共産党の指導によって、我が国は農業国から工業国に変貌する。民主主義ではなく社会主義・共産主義国家に向かうのである。そうすることによって階級をなくし、世界に共産主義を実現する。国家の軍隊、警察、裁判所は階級が階級を抑圧するための道具である。敵対階級に対しては、国家の装置が抑圧の道具である。それは暴力であり、「慈悲深いもの」ではない。「おまえたちは無慈悲だ」。そのとおりである。我々は、反動活動、反動分子、反動活動に対しては慈悲深い規律を採用することはない。〉


*原注

2 China White Paper, pp.720-729.〔編者注:China White Paperとは、U.S.Department of State Publication 3573: United States Relations With China, With Special Reference to the Period 1944-1949, Washington, 1949.のことである 『裏切られた自由 【下】』p307.参照〕

3 同右、pp.725-727.


ハーバート・フーバー著、同書、357〜359ページ

歴史に残りそうな演説ですが、ヒトラーの演説は良くテレビで流れたり、肉声でなくとも言葉を引用することはあるというのに、こういった共産主義者の演説やその引用って余り見ないのですよね。参考になればと思います。