裏切られた自由

米国の戦争介入宣伝戦の好例引用

米国が行った、対ドイツに参戦する為の宣伝戦として極めて重要な一例と感じたため、ハーバート・フーバー元大統領前著「裏切られた自由」より引用します。

第7編 アメリカ国民の洗脳

第29章 「ヒトラーがやって来る!」

我が国政府が、きわめて強力な広報組織を作り報道を操作したのは、第一次世界大戦の時期である。倫理的な抑制もないまま、天才的な能力のある人々がそうした組織を主導した。その結果が我が国のヨーロッパの争い事への参戦であった。

私は同じようなことが繰り返されることを警戒し、『アメリカン・マガジン』誌に寄稿した1(一九三九年八月)。記がその論文の一部である。

〈国民に真実を知らせない技術がますます蓄積されている。そのための手段にあらたにラジオ放送という武器(手段)ができた。

先の大戦の初めから、我が国民に対するプロパガンダの様をじっくり見ることになった。プロパガンダは、敵対する両陣営それぞれから仕掛けられた。そのやり口はある意味見事なもので、私は、そうしたプロパガンダの実態を示す資料を収集した。それらはスタンフォード大学の戦争資料館に保管してある。各国政府が発したプロパガンダ資料に「嘘」を見ることができる。

(我が国の広報組織から発せられた)嘘とは、「参戦しなければ、民主主義はこの世から消える」というものであった。〉

昔から、戦争によってまず犠牲にされるのは「真実」であると言われる。現在では、戦争になる以前に、プロパガンダによって「真実」は殺されるのである。

第二次世界大戦以後もアメリカ国民はプロパガンダ情報の洪水に晒され、洗脳(brainwashed)されてきた。プロパガンダ情報を穏やかに表現するなら、「限りなく薄められた真実」と言ってもよかろう。洗脳のための情報は、我が国政府高官、民間組織、ヨーロッパの各国政府および彼らのアメリカに設けられたエージェントなどから発せられる。

「ヒトラーがやって来る!」キャンペーンの開始

ヒトラーの軍隊がアメリカを侵略する恐怖を煽ることが、プロパガンダ組織が狙う最初の作戦であった。その恐怖のシナリオは詳細に語られた。ヒトラーの侵攻準備、そのルート、侵略後の(野蛮な)行為などが微に入り細を穿って語られた。

大統領自身がこのプロパガンダの先頭に立ったのは、一九四〇年の大統領選挙戦の年であった。大統領は五月十日・十六日・二十六日に、ヒトラーの米国侵攻の恐怖を煽った。この演説に、政権幹部が呼応した。ハル(国務長官)、スチムソン(陸軍長官)、ノックス(海軍長官)、イッキーズ(内務長官)、パーキンス(労働長官)、ウォーレス(副大統領)、ウィリアム・ブリット(駐仏大使)、ジョン・ウィナント(駐英大使)、らである。

一九四〇年七月二十二日のハル国務長官の演説は、ナチスにアメリカ大陸には手を出すなと警告するものであった2。また、駐仏大使ブリットのプロパガンダ・スピーチ(同年八月十八日)は、『ニューヨーク・タイムズ』の翌日の記事で次のように報じられた3

〈危機に晒されるアメリカ

私(ブリット)自身の経験と、ワシントン政府が収集した情報を総合すると、我が国はいま危機的状況にあると言えよう。我が国は、ちょうど一年前のフランスが置かれた状況にある。いま決断し行動を起こさなければ手遅れになる。

独裁者が我が国を侵略できないのは、英国艦隊の存在と、英国民の強い意志があるからだ。英国艦隊は枢軸国をいつまで閉じ込めておくことができるのだろうか。枢軸国の海軍がいつ大西洋に進出し、我が国を脅かすか。それは誰にも予測することはできない。

ただはっきりしているのは、我が国民の誰一人として、あのヒトラーがインディペンデンス・ホール*にやって来て、自由の鐘を嘲笑するような事態を望んではいないということである**。〉

大統領も負けてはいない。一九四〇年一二月二十九日のラジオを通じた「炉辺談話」で次のように述べた4

ジェームズタウン***やプリマス・ロック****の時代以来、我が国がこれほどの危機に晒されたことはない。

ナチスの連中は、自国を制圧しただけではなくヨーロッパ全体を奴隷化している。そして(制圧した)ヨーロッパの資源を利用して、世界を支配しようとしている。

枢軸国が我が国を攻撃することなどあり得ないと訴える者がいる。これこそ希望的観測というものだ。そのような思いを持ってしまったために抵抗する心を失い、征服されてしまった民族は多い。ナチスは、他民族は劣等であると繰り返し主張してきた。劣等民族は優秀な民族(ドイツ民族)に隷属しなくてはならない。それが彼らの主張である。注意しなくてはならないのは、我が国の資源と富の存在である。これをナチスは狙っている。

現実から目を背けてはならない。他国を侵略し、支配し、腐敗させた恐ろしい力が、我が国の目の前まで迫ってきている。〉

ヒトラーが我が国を狙うという恐怖を煽るキャンペーンは、ワシントン政府は、ヒトラーの目が東を向きロシアを狙っていることがわかっていながら続けられたのである5

ルーズベルト氏は、一九四一年三月十五日にも同じようなスピーチをしている。武器貸与法(後述)が成立(三月一日)してすぐの時期の演説で、ナチスのアメリカ侵攻の危機を煽っている6

〈ナチスは、世界の植民地や国境の現状を変更しようとしているわけではない。彼らは世界中の、議会制国家の破壊を目指している。彼らは少数の人間に統制された国家建設を目指している。〉

大統領は、五月二十七日にも次のように国民に訴えた7

〈最も重要なことは、ヨーロッパで始まった戦いが、世界全体の支配を目指す戦いになっていることだ。ナチスはもともとそのような考えを持っていた。

アドルフ・ヒトラーの狙いは、たんにヨーロッパの征服ではない。彼の最終目標は世界征圧である。もうすでに明白になっていることだが、ヒトラー主義(Hitlerism)を力を以て牽制しないかぎり、ナチスの破壊兵器は我が国を脅かすところまでやって来る。

ヒトラーが優勢になれば、彼がどのような講和条件を持ち出すかはっきりしている

彼らはまず傀儡政権を作り上げたうえで、ドイツに平伏させ、世界中を鉤十字の旗で覆い尽くすのだ。

独裁者たちは、いま大西洋と太平洋の覇権を狙い、海軍力・空軍力の増強を進めている。

また、いくつかの国を経済的に締め付けている。

私は推測で話してはいない。ナチスの教本に書かれていることを述べているだけなのだ。彼らは、我が国を、そしてカナダに対する締め付けを進めている。我が国の信教の自由はいま脅かされようとしている。

彼らは、いつでもスペインを、ポルトガルを占領できる軍事力を持っている。彼らはさらに西に出て大西洋の島々を脅かそうとしている。彼らはまずダカール〔訳注:アフリカ大陸西端の港町〕を狙い、さらにアゾレス諸島、ケープヴェルデ諸島を取ろうとしている。

ケープヴェルデ諸島からブラジルまでの距離は爆撃機や兵員輸送機でわずか七時間である。

すでにヨーロッパの戦いは南北アメリカ大陸の目前にまで迫っている。米国本土までもうすぐのところまで来ている。

大西洋の島のどこかが占領されてしまえば、たちまち南北アメリカの安全が危機に晒されることになる。〉

ヒトラーが(西に向かわず)ロシアとの戦いの火蓋を切って七週間目の八月十五日、今度はスチムソン陸軍長官が、不気味な声明を発表した8

〈現在の爆撃機は数千マイルの航続距離がある。アメリカを侵略するには十分な兵器なのである。

ダカールは、現在ヴィシー政権が支配し、ドイツと友好的である。このアフリカ大陸西端の町を押さえれば、ブラジル東端まではすぐの距離となる。

枢軸国が、ブラジル国内に呼応する第五列と共謀すれば、南アメリカに(我が国を)侵略するための橋頭保を築くことは容易である。彼らは簡単にパナマ運河の爆撃が可能となる。

そうなれば、(枢軸国の)危険に面と向かうことになる。我が国内の孤立主義者は、この時になって初めて、自国が侵略される危険を感じることができるだろう。ドイツの脅威を侮ってはならない。ドイツ軍は700万以上のよく訓練された軍隊を持ち、空軍も50万を要している。(ドイツの同盟国である)日本も200万の兵を保有しているのである。〉

スチムソン長官の恐怖を煽る言葉の中には、たくさんの「if(もしも)」がある。もし、ドイツがダカールを取ったら、もしドイツ海軍がアメリカ海軍を圧倒してブラジルに進出したら、もしブラジルにやって来たドイツ軍がアメリカの反攻にもかかわらず空軍基地を建設したら、もしアメリカ本土を攻撃する爆撃機を持っていたらなどと、「if」ばかりの声明である。

しかし現実には、ヒトラーの軍隊は対ロシア戦にかかりきりである。ロシア国内深く侵攻している。ドイツは兵士も航空機もロシアに向けているのだ。

一九四一年九月十一日、すでにヒトラーの軍隊はロシアで激しい戦いを繰り広げている。この時期にあって、今度は大統領が国民の恐怖を煽ったのである9

〈宥和主義者の「ヒトラーは北米大陸には興味がない」というささやきや、「大西洋が我々を守ってくれる」という子守歌のような主張は、洗練された現実主義に立つ国民には無用の戯言である。〉

大統領はさらに次のように続けて、国民の不安をかきたてた。

〈ガラガラヘビがこちらに向かって咬みつこうとしている時に、咬みつかれるまで待っている者はいない。

ドイツやイタリアの艦船が海を渡ろうとすれば、彼らは我が国の反撃を覚悟しなくてはならない。

合衆国陸海軍の最高指揮官として、侵入者は撃退する。私はその命令を躊躇なく下す。〉

一九四一年十月二十七日にも大統領は「危険」を煽った。ドイツ軍はすでにロシアの戦いで泥沼の戦局に陥っていた時期である10

〈私の手元には、ヒトラー政府が極秘に作成した地図がある。新世界秩序を夢想する者たちが描いた地図である。そこには、南アメリカと中央アメリカの一部が描かれている。ヒトラーがこの地域の再編成を企図していることがわかる。地図に描かれた地域にはいま十四の国が存在する。ヒトラーはその国境を消してしまおうとしている。彼らは南アメリカを五つに分割し、その属国化を企んでいる。そのうちの一カ国は、我が国の生命線であるパナマ運河を領有することになっている。

手元にあるこの地図は、ナチスの狙いが、単に南アメリカを支配するだけでなく、我が国までも狙っていることを示している。

この地図の他にも、ヒトラー政府が作成した文書を入手している。そこには、ドイツが勝利したら、何をするかが書かれている。彼らが決して公表できない、公表したくない内容である。そこには宗教の廃止が謳われている。カソリック、プロテスタント、イスラム、ヒンドゥー、仏教、ユダヤ。宗派にかかわらず廃止を企んでいる。教会所有の財産は、すべてドイツ政府あるいは傀儡政権の所有となる。十字架を含むすべての宗教的シンボルは破棄され、聖職者らは追放されたり、強制収容所に送られる。ヒトラーより神を敬う者たちはそこで拷問を受けるのである。

ドイツは我が国に国際ナチス教会なるものを設置し、説教師はドイツから送り込まれる。そこで説教されるのは聖書に代わってヒトラーの著書『我が闘争』である。教会には十字架に代わって鉤十字が飾られる。〉

ルーズベルト氏が、右記で語るようなお伽話をどこで入手したかは決して明かされなかった11

国民の恐怖心を煽るルーズベルト政権の政府キャンペーンに呆れた私は、ウィリアム・V・プラット提督の意見を聞いた。彼はすでに退役していたが、元海軍作戦部長であった。彼は次のような意見を述べた。

〈イギリスと(亡命)オランダ政権の保有する艦船は一六〇万トンである。一方のドイツ、イタリアの艦船は五二万トンに過ぎない。イギリス本土侵攻について考えてみても、イギリス海峡を越え、イギリス国内に前進基地を作ることは極めて難しい。前進基地の設営だけでも三〇万の兵力と、商船を含む大艦隊で、一〇〇万トン超える物資を運ぶ必要がある。前線基地ができたら、さらに一〇〇万の軍を遣らなくてはならない。この侵入に対して、英国艦隊はもちろん黙ってはいない。

イギリス海峡を渡ってイギリス本土侵攻を考えることはナンセンスである。そしてまた、イギリス本土侵攻ができなければ、イギリスを降伏させられないことも明らかである。イギリスがその艦隊を(戦いもせずに)ドイツに差し出すようなことはあり得ない。イギリスが敗北することはない。

イギリス艦隊がドイツのアメリカ侵攻を防いでいるという話もまったくのナンセンスだ。イギリス海峡を渡れないドイツが、どうやって三〇〇〇マイルもの距離のある大西洋を渡れるというのか。万が一、ヒトラーがイギリス艦隊を撃破し、大西洋を渡ってきたとしよう。その後の侵攻作戦を展開するには二〇〇万の兵力が要る。その攻撃を可能にする物資の輸送には一〇〇〇万トンの艦隊が必要になってくる。この艦隊を護衛するヒトラーの空軍はせいぜい五〇〇マイルしか飛行できない。

我が海軍が一三〇万トンの艦隊を以て待ち受けている。大西洋には我が潜水艦も遊弋している。ヒトラーの艦隊が我が国から五〇〇マイルほどの距離に近づいた時点で、一斉攻撃が加えられるだろう。上陸予想地点にはすべての沿岸警備船が集結し敵艦を待ち受けるだろう。仮に我が国沿岸に上陸できたとして、アメリカ国民は一丸となって戦いを挑む。ドイツ軍の将軍も提督もそんなナンセンスな計画を立てるはずがない。

イギリスが落ちることがあっても心配していない。ヒトラーに協力する売国奴政権がイギリス本土に生まれても、イギリス海軍はそれに従うことはないだろうし、大英帝国(英連邦)のカナダやオーストラリアの統治もできない。

我が国に、南アメリカ経由で侵攻するという言説もまったく根拠がない。ヒトラーの海軍は、北大西洋ルートでアメリカ本土を攻撃する場合に比べ、二倍の距離が必要となる。要するに、我が海軍の艦船や潜水艦に攻撃される可能性が二倍にあるということである。南北アメリカ大陸にヒトラーがやって来るなどという主張はまったくの作り話であり、ヒステリーの戯言に過ぎない。〉

提督はこのように述べた上で、「日本についても、アメリカが挑発さえしなければ、我が国を攻撃することはあり得ない。彼らは我が国を標的としていない」とも付言した。

アルバート・C・ウェデマイヤー将軍は、陸軍の作戦立案に関わる重要な人物だった。彼の著作『ウェデマイヤー報告書』には次のような描写がある。

〈ルーズベルト大統領は、ナチスがダカールから南アメリカに侵攻するなどと言って国民を恐怖させた。そんな脅威などなかった。ヒトラーは一度も、南北アメリカへの侵攻など語ってはいないし、そんな計画もありはしなかった12。〉

将軍はこう述べている。

〈少しでも軍事学を学んでいる軍人なら、(ルーズベルトが語ったような)ドイツの侵攻計画がまったく馬鹿げていて非常識なことがわかる13。〉

戦後のことであるが(一九五三年十二月三十日)、アメリカ陸軍に属する歴史家であるステットソン・コンは、ドイツの南北アメリカ大陸侵攻計画に関する研究成果をアメリカ歴史学会に発表した。

〈これまでの調査で、ナチスドイツが南北アメリカに領土的野心のあったことを示す資料はないことがわかった14。〉

陸軍の情報関係者も私に対して、南北アメリカにドイツが侵攻する可能性はないと教えてくれた。イギリスのJ・F・C・フラー将軍は、軍の歴史に詳しい人物だが、彼は次のように書いている15

〈(降伏後に)押収されたドイツの文書を見ても、南北アメリカ侵攻をドイツが検討していた形跡はない。〉

一九四五年九月一日、ジョージ・マーシャル将軍は陸軍長官に次のように報告した。

〈捕虜となったドイツ軍指揮官に対する尋問と我が参謀本部の調査から、ドイツ司令部がそのような戦略計画(南北アメリカ侵攻計画)を持っていたことを示す証拠は見つかっていない16。〉

訳注

*訳注:フィラデルフィアにある独立記念館。

**訳注:自由の鐘はアメリカ独立戦争のシンボルである。

***訳注:アメリカで最初の市民会議(一六一九年)が開催された町。インディアンとの激しい戦いがあった。

****訳注:メイフラワー号が最初に上陸(一六二〇年)した地にある岩。

原注

1第20章参照。

2The Memoirs of Cardell Hull, Vol. I, p. 823.

3New York Times, August 19, 1940.

4、December 30, 1940.

5第33章参照。

6The Public Papers and Addresses of Franklin D. Roosevelt, 1941 volume, Harper & Brothers, 1950, p. 62. あるいはThe Memoirs of Cardell Hull, Vol. II, pp. 967-973. ハル国務長官は、アメリカ政府はドイツがロシアに向かうことを知っていたと述べている。

7New York Times, May 28, 1941. あるいはThe Public Papers and Addresses of Franklin D. Roosevelt, 1941 volume, p. 181ff.

8New York Times, August 16, 1941.

9The Public Papers and Addresses of Franklin D. Roosevelt, 1941 volume, pp. 389-391.

10、pp. 439-440.

11ドイツ降伏の四年後、私はドイツを訪れた。我が陸軍の幹部が私に、(ルーズベルトが語ったような内容を示す)文書を見つけるように命令され、懸命に探したが、そうした文書がどこにもなかったことを明かしてくれた。また逮捕された政治指導者や将軍らを厳しく尋問したが、そのような意図をドイツが持っていたことを示す証言は出ていない。それだけではない。国務省も、ルーズベルトが語った内容を示す文書はまったくなかったとしている。

一九四〇年十一月にヒトラー・モロトフ会談があった。この時の速記録が残っているが、そこではヨーロッパとアジアの分割が議論になっている。しかし、南北アメリカ征服といった議論は一切なされていない。

12Albert C. Wedemeyer, Wedemeyer Reports!, Henry Holt and Company, New York, 1958, pp.17-18.

13、p. 19.

14New York Times, December 30, 1953. あるいはAmerican Historical Review, Vol. LIX, No. 3, April 1954, p. 789.

15J. F. C. Fuller, A Millitary History of the Western World, Volume 3, Funk & Wagnalls Company, New York, 1956, p. 629.

16The Winning of the War in Europe and the Pacific, Biennial Report of the Chief of Staff of the United States Army, July 1, 1943 to June 30, 1945, to Secretary of War, p. 1.


「裏切られた自由 上」ハーバート・フーバー(元米国大統領)著、渡辺惣樹訳、平成29年7月13日に草思社にて刊行。379〜387ページ目より。

長く引用しましたが、この中で一九四一年十月二十七日の大嘘が甚だ醜悪だと感じており、そこが一番見て欲しい箇所です。

この書の中で多数の出典を示しながら非常に丹念に解説していますが、欧州でドイツが戦争している間も、独ソが戦っている間も、米国は英国側としてでもドイツ側としてでも(そして独ソ戦が始まった後のソ連側としてでも)介入する理由がありませんでした。世論も介入には否定的で、1940年の大統領選では「アメリカは参戦しないことを約束する競争」になり、FDRは選挙期間中に11回もこの約束を繰り返しました(400ページ目参照)。

米国は参戦する為にこのような顕著な大嘘を大統領さえもが吐くような国だ、と認識することは極めて重要だ、と感じます。